連載コラム 今なぜアスベスト問題なのか

これからのアスベスト環境曝露に対するリスクコミュニケーションガイドラインの活用

環境省から昨春、アスベスト環境曝露による被害予防として「リスクコミュニケーションガイドライン」が公表されました。
アスベストに関する情報を公開して、住民・業者・行政・専門家が共に話し合い、リスクを予防するのが目的です。

建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン(環境省HP)

現在、アスベスト飛散は、建物に使用されているアスベストが解体や改修工事によって起こる事が主な原因とされています。
もちろん、アスベスト飛散防止の対策として、大気汚染防止法や労働安全基準法などの法規制がなされていますが、業者による
法の遵守や行政による監督指導が十分に果たされていないのが現状です。
リスクを負う立場にある住民は現場に立ち入る事もできず、明らかに情報不足の状況に置かれています。
解体前に情報を公開して十分に話し合う事が重要となり、このガイドラインを大いに活用しなければなりません。

それに伴って、住民側でも公の場での協議が条件となります。
また、市内の再開発の場合には既存の建物を解体、撤去しなければなりません。
その際のアスベスト曝露を防止するために、解体着工前のリスクコミュニケーション設置を「街づくり条例」などに明文化して
追加する事が求められます。

これからは、解体中の現場で違法行為を監視するのではなく、解体前に公表された情報に基づき安全について話し合える環境を
実現させたいものです。
アスベスト曝露による被害予防には、業者による法の遵守と、行政による徹底した監督指導に加えて住民の問題意識と行動力が
不可欠となります。

アスベストは、発がん物質ですが、その曝露に気付く者は誰一人としておらず、長い潜伏期間の後に重い病気を発症するため、
一般にはあまり緊迫感がない事がこの問題に取り組む上で大きな壁となっています。
私達は、アスベスト環境曝露による被害予防のために、法の遵守を求めて活動しています。(上田進久)